こんにちは、鎌倉 三河屋本店の鈴木です。
今回は、鎌倉 三河屋本店の「石の蔵」に敷かれる鎌倉 三河屋本店の象徴とも言える絨毯の製作の裏側を皆様にご紹介させていただきます。
設計士から「絶対に鎌倉 三河屋本店に合うから」と紹介されたのが、山形県にある絨毯メーカー「山形緞通(やまがただんつう)」さんでした 。皇居新宮殿や歌舞伎座にも絨毯を納入しているなど、日本が誇る極めて高い技術を持った作り手です 。
約2年半の歳月。蔵の存在感を引き立てるデザインを求めて
2023年12月、東京のショールームを訪問し、その想いと技術にすっかり惚れ込みました。宮腰が「絶対にこの絨毯を使いたい。」と熱く語っていたのを今でも覚えています。当初はメインテーブルの壁紙として飾る案もありましたが、最終的に石の蔵のメイン絨毯として位置付けることになりました。
デザインの打ち合わせは、約2年半という長期間に及びました。お客様の節目となる舞台にふさわしいものであること。そして、この蔵を引き立てる象徴であること。この想いを形にするため、山形緞通さんに多大なるご協力をいただきました。
山形緞通さんのラインナップから鎌倉 三河屋本店のイメージに近いものを選ぶ様子
最初にご提案いただいたデザイン
デザインの方向性
ベースカラーには空間を引き締め、格式高さを演出する「紺」を選択しました。そしてメインデザインには、ハレの日にふさわしい「つがいの鶴」を配しています。
外側を囲むボーダー(縁取り)にもこだわり、クラシカルになりすぎず、それでいて空間に重厚感を与えるデザインを追求しました。宮腰の頭の中にあるイメージを宿題として持ち帰っていただき山形緞通の皆様にはデザイン提案のために何度も鎌倉へ足を運んでいただきました。
決定した絨毯のデザイン
糸選びの様子
その後「糸選び」の打ち合わせを実施しました。シルクやウールの糸を実際に見比べながら、鶴の純白、頭頂部の朱色、外側のボーダー模様、そして重厚感を際立たせる銀糸など、全体のバランスを見ながら糸を組み合わせていきました。
デザイン提案をいただいたものから、糸を選ぶ様子
実物サンプルを元にした打ち合わせの様子
選んだ糸で織られた「2種類の実物サンプル」を用意していただき、仕上がりを確認。実際の織り上がりを確かめながら、色味や銀糸の入り方を微調整。さらに、鶴の表現方法を検討し、当初想定していたデザインよりも、よりシンプルになるように削ぎ落としを行いました。
こうして鶴の織り方を選択し、約2年半におよぶ期間を経てデザインが本決定しました。
デザインと使う糸が決まった後に、サンプルを織っていただいたもの
その打ち合わせの様子
山形の工房へ
製作が佳境に入ったということで、実際に山形の工房へ見学に行ってきました。
山形緞通さんの最大の魅力は、糸づくりから染め、織り、仕上げに至るまで、すべての工程を自社で一貫して行っていることです。今回の鎌倉 三河屋本店のメイン絨毯も、糸の染色から製作してくれています。
その感動の製作工程を、実際の工房の様子とともにご紹介します。
山形にあるオリエンタルカーペットの山形緞通さん
1. デザイン図面の作成
まずは、三河屋本店の象徴となる鶴の意匠や、空間に重厚感を与える外側のボーダー(縁取り)デザインを図面化していきます 。
2. ベースとなる糸の染色
国内のカーペットメーカーで自社内に染色工房を持っているのは山形緞通だけです。そのため、鎌倉 三河屋本店が求める絶妙な色合いを、追求することができました。
染色工房の様子。自社でオリジナルの色を出せるのも大きな強み。
3. 糸の引き揃え
染色した糸をそのまま織るわけではなく、「青に対して黄色の糸を何本入れるか」といった複数の糸を引き揃えて独自の色を作り出します。今回は、ウールだけでなくシルクの銀糸なども含め、全部で22通りの色を使用する仕様となりました 。
糸の引き揃えの機械。古い機械をメンテナンスしながら使っているそうです。
4. 図案の書き込み
織架(しょっか)と呼ばれる巨大な木の枠に綿の布地(基布)を張り、そこに直接図案を描き込みます 。職人さんはこの図案が描かれた裏側から糸を打ち込んでいくため、完成形をイメージしながら作業を進める必要があります 。
基布に直接デザインを描き込み、そこに糸を織り込んでいきます。
5. 打ち込み(ハンドタフテッド)
「フックガン」という専用の工具を使い、キャンバスに糸を射出して刺繍のように織り込んでいく「ハンドタフテッド」という技法を用います。機械作業ではなく、人の手による手仕事です。職人さんの力の入れ具合ひとつで絨毯の密度や柄の形が変わってしまうため、布を切らないように均一に打ち込んでいくのは、熟練の技とのことです。
フックガンを用いて、糸を射出して織り込んでいる様子。
鶴の繊細な部分を織り込んでいる様子。
6. 糸の使い分けと繊細な手順
この絨毯には、適材適所で異なる糸が使われています。鶴の部分には細い糸を使用して繊細な表情を出し、よく踏まれる地の部分には頑丈な糸を使用することで、美しさ(意匠性)と耐久性(機能性)を両立させました。まずは「捨て折り」と呼ばれる手法で鶴の輪郭などを縁取り、そのあとに中のグラデーションや地の部分を打ち込んでいきます。こうすることで、高解像度で美しい鶴の柄を表現するそうです。
使われている糸、全22色。総重量は100㎏にも及びます。
7. 仕上げ
裏側からすべて織り上がった直後は、表面の糸がモコモコの状態です。ここからさらに表面を平滑に美しく整える仕上げの工程を経て、絨毯が完成します 。
織り上がった直後の様子。
手作業で表面を滑らかに整えていきます。
日本が誇る最高峰の絨毯メーカー「山形緞通(やまがただんつう)」
鎌倉 三河屋本店の絨毯製作をお願いした「山形緞通」は、1935年に山形県山辺町で創業しました 。雪深く厳しい冬の環境下で、女性たちが安心して清潔に働ける手仕事の場を作りたい、という創業者の思いから始まった歴史ある企業です。現在でも、糸づくりから染色、織り、そして仕上げに至るまで、すべての工程を自社工房で一貫して行っています。
その類まれなる技術力の高さは、国内外の歴史的建造物や国家的な施設への名だたる納入実績が物語っています。
【主な納入実績】
皇居新宮殿: 1960年代に絨毯を納入し、国に高い技術を持つメーカーとして認められる大きなきっかけとなりました 。
京都迎賓館: 日本に2台しかないという幅10メートルの巨大な手織り機を使用し、最大10人の職人が横一列に並んで織り上げました 。
歌舞伎座: ロビーを彩る鮮やかな鳳凰をモチーフとした絨毯も、山形緞通の自社染色と手仕事の賜物です 。
バチカン宮殿: ローマ教皇(パウロ6世)の紋章をあしらった絨毯(タペストリー)を納入したという、世界的な実績を持っています 。
戦艦「大和」: なんと、あの歴史的な巨大戦艦の艦長室にも山形緞通の絨毯が納められていました 。
代表の宮腰と営業の渡邊さん。2年半にわたって完成させてくれました。
