こんにちは、鎌倉 三河屋本店の鈴木です。
本日は、現在進行中の「瓦屋根の葺き替え工事」についてご紹介いたします。
鎌倉 三河屋本店の建物を見上げたとき、まず目に入るのが大きく広がる瓦屋根です。
この場所が約100年続き、若宮大路の景観を作る上での象徴的な部分です。
今回行っている瓦屋根の工事は、既存の瓦をできる限り活かしながら、屋根を軽量化し、防水性と安全性を高め、この建物を次の世代へ残していくために行います。
文化財としての価値を守りながら、「これからも使い続けられる建物」であるために欠かせない大切な工事になります。
瓦屋根の工事の様子。屋根に登り、一枚一枚取り外していきます。
調査によって明らかになった、屋根が抱える課題
今回の工事に至ったきっかけは、建物の詳細な調査を行ったときでした。
瓦そのものの状態だけでなく、瓦の下にある構造、建物の構造を確認していく中で、建物全体に対して屋根の重量が大きな負担になっていることが分かりました。
また、屋根と建物の構造が複雑になっており、雨漏りが起こりやすい現状もありました。
日本の伝統的な瓦屋根は、
・桟木(さんぎ)と呼ばれる横に渡す木
・泥や土を盛土にし
・瓦を桟木に引っ掛けて固定
という工法で作られています。
建物は上部が重いほど地震の揺れを大きく受け、柱や梁にかかる力も増してしまいます。
また、揺れや暴風雨などで瓦がずれ落ちる危険もしばしばあります。
そのため、屋根の軽量化+瓦の固定は、建物全体の耐震性と安全性を高めるために必要不可欠な前提条件でした。
建物に足場を組み、何面もある瓦屋根を1面ずつ工事していきます。
今回の瓦工事の目的
こうした調査結果を踏まえ、今回の屋根工事に3つの目的を持たせました。
① 既存の瓦を再利用し、建物の歴史を継承すること
三河屋本店の瓦は、この建物が積み重ねてきた時間そのものです。軽量化の瓦に変えるのではなく、できる限り再利用し、屋根の表情を残します。
② 屋根内部の盛土を取り除き、建物への負担を軽減すること
瓦の下に敷かれていた泥や土(盛土)は、かつては瓦を安定させるために必要な工法でしたが、この盛土をすべて取り除くことで、大幅な軽量化を実現させます。
③ 雨風や地震に耐えられる、安全性の高い屋根構造にすること
従来の瓦屋根は、桟木に瓦を引っ掛けているだけの構造でした。現代の技術も取り入れることで、防水性を強化し、かつ瓦の滑落を防ぎます。
三河屋本店が酒屋の営業をしているときの写真。瓦屋根が歴史の重厚感を感じさせます。
瓦葺き替え工事の工程
① 瓦を一枚ずつ外す
まずは屋根に載っている瓦をすべて外します。再利用を前提としているため、瓦をすべて下ろし、割れや欠けがないかも確認します。
② 瓦の下にある泥・土を取り除く
瓦を外すと、その下には大量の泥や土が現れます。すべて手作業で丁寧に撤去していきます。
この工程によって、屋根は大きく軽量化されます。
③ 桟木(さんぎ)、杉皮(ばらいた)を撤去
瓦を引っ掛けるための桟木と、昔ながらの防水材でもある杉皮をすべて取り外します。
④構造用ベニヤを敷き、屋根下地を強化
屋根全面に構造用ベニヤを敷き、屋根全体を一体化させ、剛性を高めます。
⑤防水シートを施工
ベニヤの上に防水シートを施工し、瓦の隙間から入る雨水も確実に外へ逃がす構造にします。
⑥新しい桟木を設置
瓦の寸法や重なりを計算し、新しい桟木を正確に流します。
⑦瓦を再び葺き、1枚1枚を固定
最後に瓦を戻します。瓦はきれいに土などを除去した後、釘やビスで固定できる穴を空け、一枚ずつ固定します。
見た目は変わらず、中身は大きく進化した屋根が完成します。
この工程を、鎌倉 三河屋本店すべての屋根に行います。
瓦を一枚一枚丁寧に外していきます。
瓦の下にある泥・土を取り除いていきます。
瓦についた泥や土などを落とします。
取り外した瓦をこちらを使って地面に下ろします。
取り外した瓦をこちらを使って地面に下ろします。そのレール。
既存の瓦と風合いを変えない新しい瓦。
今回の瓦屋根の葺き替え工事は、完成後に見た目が大きく変わるものではありません。
しかしその内側では、屋根の重量を見直し、雨仕舞いを整え、瓦一枚一枚を確実に固定することで、建物としての安全性と持続性を大きく高める更新が行われています。
鎌倉 三河屋本店は、ただ保存するための建物ではなく、これからも人が集い、使われ続けていく場所でありたいのです。
だからこそ、当時の姿を尊重しながらも、必要な部分にはきちんと手を入れ、未来に耐えうる状態へと整えていきたいと考えています。
約100年にわたり若宮大路の景観を支えてきたこの屋根も、今回の工事を経て、次へと引き継がれていきます。
これから鎌倉 三河屋本店を訪れてくださる皆さまには、ぜひこの瓦屋根の下に積み重なってきた時間や、見えない部分に込められた想いにも、そっと思いを馳せていただけたら嬉しく思います。
今後も、鎌倉 三河屋本店が未来へ向けて歩んでいく過程を、このブログを通してお伝えしてまいります。